私に恋を教えてくれてありがとう【下】

華子は頻繁にしゃがみこむ様になっていた。


診察介助をしている最中(さなか)


胃が焼けるのを感じ


毎日頓服薬を服用していた。



しゃがみ込む姿を見るなり師長が

気の持ちようよ、金平糖を薬だって渡したら治るわよ

と皮肉っていたと

同期の師長嫌いから聞いた。


やはり師長と滝瀬が繋がっている。


そう思う度

今までの惨憺たる自分の醜悪さが身に沁み入り

早く夢から覚めたいという

淡すぎる希望の念が溢れそうになる。



しかし、華子は気丈でいることにした。



奴らの思うつぼというのは絶対に避けなければいけないと


華子は心に決めていた。


それが華子の正義だった。


華子の新しく構築された“倫理”だ。


これが今の華子の守るべき道徳。


しかし地盤は緩い。


ぬかるみに構築されたものは

崩れやすい……。



でも今の華子には立派な梁がある……。