私に恋を教えてくれてありがとう【下】

翌日華子は普通の日常に戻れる筈もなかった。




職場の視線を矢の様に痛く

冷たく感じ

誰しもが今回の事を知っている様な

被害妄想を繰り返し


師長は相も変わらず

にんまりとしていたが、

いつもとは違う奇妙な同情が見えた。




さぞかし気分が良いのだろう。




帰路はというと

滝瀬に車で送還された。




華子の携帯は公衆電話からの着信で埋め尽くされる。



そんな環境は滝瀬の都合と

歩合を窺い

一週間で切り上げられた。



滝瀬からは確かに逃げ遂せたかもしれないが


他の看護師からの扱いが粗雑になった気がするのは間違いない。



あの女が漏らしたのだ。



漏らしたというよりも

べーべーとしたガマ口はいつも開いていて

入ってくる虫どもを逃がさない。



自分はその餌にされたのだろう。



滝瀬の話しこんでいる姿をとらえるたび

華子の胃は重くなっていく一方だった。