私に恋を教えてくれてありがとう【下】

「はいはい、お待たせいたしました~!

 ブレンドコーヒーですね!

 お砂糖とミルクはいりますか?」

滝瀬に軽い挨拶を済ませたのち

温かいお母さん声を弾ませながら

優しく華子のそばにコーヒーを置いた。



「あ……いえ、結構です

 ありがとうございます」



いい人には良い対応を。


華子は若干背筋をピッと延ばし軽くお辞儀をし、厨房へと戻るままを優しい眼差しで見た。



滝瀬はそれを鷹の目で見ていた。




「あら、お行儀がいいのね」




そら豆みたいな指でダイエットシュガーを3本コーヒーに入れながら

ねちっこく華子に言った。


「いえ、人見知りをするもので……」


華子はその手元を見ない様

気を紛らわす為に

滑稽なダイエットシュガーの亡骸を見つめながら

謙虚な態勢を崩さずに言った。


「男の人には見知ったりするの?」




滝瀬はニタリとし、黒い砂糖汁をすすった。



「あまり得意ではないです」




「そう?

 患者からも声を掛けられると聞いたけど?」




「いえ、それはただのひやかしです

 本気でなんてありえません」



華子は負けじときびきび返事をしていったが

滝瀬の尋問気どりに吐き気がさした。


しかし、徐々に心拍数が上がっていくのがわかる。



一語一句に気を置かなければ。