私に恋を教えてくれてありがとう【下】

炊事で荒れた皮膚が

華子の腕をむんずと容赦なく取り押さえた。







「今日は私と帰りなさい」











ピクリとも動かない細い口の隙間から聞こえてきたのは何なのか


幻聴か……。




“今日は”が引っかかって聞こえたのは自分だけか?




単純に“今日一緒に帰りましょう”ということか?




そんな考えの迷いはなかった。



酷い握力でミシミシと食い込んでいく彼女の手。




華子は滝瀬のギラギラした小さな瞳孔に

自分の姿を見た。




『私は捕まっている』






逃げ回っていた小動物が稲妻に射とめられた。



華子は喉が焦げるのを感じ

耳元でボーっと汽笛が

なっている症状に襲われた。



微かに他の雑音は聞こえるが

随分とくぐもって


視点は見事にばらけた。