私に恋を教えてくれてありがとう【下】

牧田は華子が口すっぱく言っている

“TPOを考えて”


ということを難なく破っている。


その事実を考えると

牧田の“愛”を信じることは

一日を25時間にするのと同じ。



『そうしたいが

 そうはいかない』


といったところ。


だから華子は言い返さない。


言い返せない。




彼に愛していると言うのは簡単な事かもしれないが


口先だけならということ。


それに

もうひとつの理由があった。




華子が頑なに自分の愛を語らなないのは


その言葉が彼にとって重くなる事を恐れ


家庭がある人間へ送る言葉として


都合の悪いことだと華子なりに解釈していた。




それは牧田への気遣いであり

一日に10分程垣間見える『妻』への

気遣い。



そして自分への防衛。