女子達は、自分の後ろに立つ
その女の存在に気が付くと、

「すっ…すみませんでしたっ」


真っ青になり頭を下げ走り去る。




「毎回、邪魔なんだけど。」


微かにこちらを向く、この女は

ー 風間 千依 (カザマ チイ)ー



『風間…いくらなんでも今のは怖がるだろ。』



「あら、私は神谷に感謝されるべきだと思うけど。」



可愛らしい名前に似合わず、コイツの口と性格は
どこまでも悪いらしい。


うちに次ぐ、大企業の取締役の娘には思えないほどに。




「風間は美人だけど、
恐いってのが先にくるからなぁ」


俺の席に座り、ケータイを弄りながら話す十町は、
悪びれる様子もなく言う。

「十町は外見の良さより、内面のいい加減さが先に立つような気がするわ。」




顔を引き攣らせて反論するコイツもどうかと思うが。


「おぃ風間、その辺にしておけ。

お前は何か俺に用があったんだろ?」



風間は不機嫌な顔のまま、俺の方を向き、プリントの束を突き付けた。