「おぃ神谷。どーしたんだよ?お前らしくねーじゃん。」



俺の机に堂々と腰掛け、またも首を傾げる、隣の席のこいつは
― 十町 棗 (トマチ ナツメ)―



よく一緒にいるので、一応友達というものなのかもしれない。


『いや……少しぼーっと
していただけだ』



俺が答えると、ふーん…と気の抜けた返事をして、さっき告白されたという女の話しをぺらぺらと喋り始めた。

茶色に染めたくせ毛に、
崩した制服。


こいつを初めて見た奴は、誰もこいつが現国務大臣の息子で、学年でも3番目の秀才だとは思わないだろう。


いくら此処が金持ちが通う私立校だとしても、コイツ程全てが整ったヤツはいないと思う。


そしてコイツの1番の美点は
生きていくのがうまい事。


頭が良くても近寄りがたい雰囲気は作らない。

金持ちでも、自慢する様な事は絶対にない。



コイツは人に好かれる、

“馬鹿”になる、



天才だ。






そしてちゃっかり者。

面倒臭いコトは


絶対にやらない。








でなければ、俺の
“生徒会長”
という肩書は


コイツのものだったかもしれない。







まぁ、無いとは思うが。




俺があの、神谷の家に生まれた限り。








俺の名前は、
神谷 御言 (カミヤ ミコト)



俺の家は、日本は勿論、海外を中心に企業を展開する証券会社。

恐らく、日本ではトップクラスの大企業。



その"神谷グループ"の
跡取り息子である俺が、この学校を率いることは、ほぼ決まっている事だった。




誰もが俺に逆らわない。


うちの会社が怖いから。









つまらない







つまらない








全てがつまらなかった。