「ああ、いや、その芸術品は事情を知らないっすから。
　敵と認知したものを殺傷する危険性があるんっすよ」

　クルルが、芸術品という彼のことを良く知らないことを良いことに、チェストは、身内に広がる分析結果をそのまま告げた。

「嘘だろ、奴はやっぱりドラゴンの思考しか持ち合わせてないのか」

　クルルが言うなり中に走り出し、妹の名前を叫んだ。

　ふと、奴らが振り向く。

　その翠の瞳が妖しく光、争う三体の式紙を余所にその場の空気が凍り付く。

「なにしてるんっすか。
　やばいっすよ」

　チェストは、入り口で薄情にも相手が放つ殺気めいたものに首を振っただけだった。

　しかし止めなければ、ルミアを呼びつつ近寄ろうとするクルルが危ない。

　チェストは、腰に装備していたボーガンを抜き、とっさに向かって来た一体を射ぬいた。

　クルルの眼前で妹に似た、生物が崩れる。

「チェスト、お前」

「偽物は、この際、削ってなんぼっす」
　振り向くクルルの怒りにチェストは、小さく言い返す。

「元は人間なんだ、助かる方法くらい探せよ」

「まったくだ」

　がなるクルルの声に重なり、チェストの背後から声が聞き覚えのある声は響いた。