チェストは慌てて手を振り口元を抑えて式紙三体を指差した。

 鋭い唸りを上げて空中の雀と鸚哥に食いつく狼に、クルルも疑問を持つ。

「厄介って、狼のひとり勝ちだろ」

「普通の対戦ならそうっすけど、式紙同士は」

 チェストが言った側から、鸚哥が狼の前を横切り二度羽ばたいて空中に浮く。

 狼のアキレス腱中りに疾風が食いついた。

 これは、種術者同士の技術争いでもある。

 チェストは近くにいるだろう式紙の創造者を探す。式紙が術を繰り出すには、それなりの合図を出せる位置にその人物は潜んでいる筈だった。

 狼と鸚哥に指示を与えている創造者は検討がついているチェストだった。

 顔を併せたく無いと言いながら、どこかで絡んでしまう悪党の兄と姉に半ばあきれた溜め息を吐いて壁際に身を寄せ、クルルの腕を掴んでいた。

「今入るのは危険っす」

「分かってる、分かってるけどルミアが居るんだ」

 言葉を吐いて奥歯をきつく噛み締めるクルルに、チェストもどうしたものかと眉を寄せた。

 他人のやろうとしている事柄を推測することはできても確信は見るまでわからないというのが本音だった。

「とりあえず、どれが妹さんかわからないっす」