やがて、全ての棺を覗き終わった少女は、何事かひとりごちるとすべての棺を丁寧に撫でた。

 その後、少女はなにやら満足気に頷いて出ていった。

 チェストとクルルは物陰から這いだして、透明な棺に顔を近づけた。

 ぱりん。

 クルルがその音に体を捻り、チェストを手招きだけで呼んだ。

 別の棺を覗いていたチェストもまた、音がした方へと目線を向ける。

 棺の隅にひび割れができていて、中の液体が一筋の道を作り床に落ちる。

 それを皮切りに、連鎖反応とでも言うように、爆発音が棺を粉砕した。

 チェストもクルルも、床にへたり込み棺の中から這い出てきたそれらに目を奪われる。

 爆風に呑まれなかっただけでも幸いなのだろう。

 二人の頭上からは炭と灰と硝子の破片が降っていた。

「陣地での爆発と一緒だ」

 クルルの呆然とした呟き。

 同じ顔の人間達が出口からさ迷うように出ていく。

「でも、あの子は、触っただけっすよね」

 チェストも半開きの口をなんとか動かして先程の光景から今に繋がる原因を思い浮かべて、言葉にする。

 ──緊急につき扉をロック致します──

 セキュリティが作動し平坦な声が降る。