叫ぶクルル同様にチェストも意味はわからない。

　なにをどうすればこんな事態になるのか、予想も推測もできなかったが、眼前に並ぶ人間は、皆同じような顔をしていた。

「兎に角、敵に見つかったらやばいっす。
　此処は調べてから考えるっすよ」

　下でもがくクルルを説得して、チェストは倉庫内を調べ始めた。

　配線コードに実験機材、どれもこれもチェストには触れたことのないもばかりだった。

　わかることは、此処であのDMを生産しあの陣地内で微調整をしていたと言うことくらいだった。

「ルミア」

　クルルの悲痛な声に、チェストははたと危険を察知した。

「クルっち、隠れるっす」

　倉庫の外で微かな物音が聞こえ、チェストはとっさにクルルを引っ張って物陰に隠れた。

　倉庫の扉が音を立てて開くと、チェストは唾を呑み込んで入って来た人物を確認した。

（不思議ちゃんっすか）

　胸中で、名前のない茶髪茶眼の少女をそう呼び捨てて安堵の息を吐く一方、敵が来るのではと言う危機感に冷や汗を流しながら、チェストは少女を目で追った。

　少女は、白竜(ﾎﾜｲﾄﾄﾞﾗｺﾞﾝ）を抱きかかえて棺に近寄り、顔を近づけたりして様子をみていた。