そこまで怯えぶりをを発揮すれば、大抵の人間は年に関係なく切り捨ててくる。ましてや、出世思考の人々は、我先にと犯人を追い掛けてブギルの元を立ち去った。

 ブギルは、呆れ半分、自嘲半分の複雑な笑みを浮かべて水路の入口を開いた。

 大陸の水路入口は、まだ、ボルト固定がされていない。

 種で簡単に固定しただけの入口は、共通解除呪文で開いてしまう。

 政府も神官も緊急脱出経路として使用しているために、そこらへんの規定は甘かった。

 ブギルは、そのまま水路へと降り隣町のバロックスへと移動することになる。

 そして、結界を知らない少女もまた、変な声が聴こえるとセスナのサイズを膨れさせた。

 もちろん、術者は上空までを結界で隔離した。

 しかしながら、少女とセスナにはなんの意味もないことでしかなかった。

 セスナの影が太陽の光に浮かび上がる。

 いきなりの攻撃に、いきなりのゲート開通、そして、闇市の奥深くで密かに売買される代物の飛来に、政府軍はあわやの大混乱に陥った。

 最早、ゲートの向こうを推測できる人間は居ない。

 ましてや、好き好んでゲートを開けようと試みる輩も居なくなった。