アリトはただ笑みを投げ、スピカから遠ざかる。

 銀雨はスピカの腕を狙い即座に噛みついた。

 式紙の威力はスピカも体験済みだ。

 普通の動物と変わりない。いくら、治種で治せると理解していても、恐怖や痛みには耐えられない。

「スピカさん」

 ヴォルラスが、ルミア相手に声を掛けてくるが、答えている余裕はなど等に消えている。

 スピカは銀雨の命霊に向けて、鉄の杭を打ち込むと、噛まれた腕を庇い、その場に片膝を付いた。

 腕が千切れていないだけ、奇跡と言える。スピカは痛みに呻きながらも、その傷に目線を向けることができずにいた。

 痛みを押さえた手に広がる生ぬるい感触。

 ともすれば発狂しかねないと言える痛みが浸透する。

「政府の方、此処は退きましょう」

 ペシェが早急に判断を下す。

 何故なら、スピカの負傷で戦力は敵側にあったのだ。

 ヴォルラスもペシェも向かうルミアと紅宝石の力で狂うギバルを止めるに至らない。

 ヴォルラスがスピカを庇うように立ちはだかれば、戦う相手を求めてDMの姿が見え始めていた。

「ねえ、お兄ちゃん達もお母さんに強くしてもらおうよ」