「はあ、それは大変だな」

 スピカが一気に説明するも、彼の手は酒を求めて机をさすっている。呆れたスピカは、酒瓶を彼から離れた場所に置いて苦笑いを浮かべてみせた。

「政府が政府に捕まってどうするんですか。
 それに、何か様子が変だったんです」

「奴らはいつも変だろ」

「いえ、そうではなくて、ヴォルラスさんは政府でも有名な家柄の御子息ですよ。
 神官を匿ったと言う理由だけで連れて行かれるなんておかしいじゃないですか」

「どこがおかしいんだ」

 酔いながらも疑問符を飛ばす彼に、スピカは自分の前髪を手で握り、困ったように口を開いた。

「ですから、ヴォルラスさんを連行すると言うことは格闘家達に喧嘩を売ることになるんです」

「大丈夫だろ、ヴォルの親父さんはそんなことで騒ぐ人じゃない」

「いいえ、僕が心配なのはお兄さんのほうです」

 ヴォルラスには二人の兄が居る。

 両方とも政府の陸軍で働くエリートという立場で、事件の解決数や戦争での功績もなかなか知られたものだった。

「ヴォルの兄貴達は、島のことで手一杯だろ」

「アスカから連絡が入っていたんですよ。
 二人が休暇をもらって実家に帰ったと」