「だけど、どうやってこの町から出るつもりだよ。
 さっきの話しじゃ政府領域のコリアに行くって言わなかったか」

 走りながら会話した内容を思い浮かべたのか、クルルが疑問符を飛ばしてくる。

「大丈夫っすよ。
 水路まで結界の影響が出てるとは思わないっす」

 確信に満ちたようにチェストは言う。
 結界を中心技術とする面子が非合法で編み出した画期的方法で作られた空間に、一般的知識は通用しない。

 町と水路はその空間術により完全に分離している。

 町と町を隔てることができても、水路を町と町の間で遮断することはできないのだ。

 つまりは、地下までひとつの術で区切ることはできないと言うことである。

 だから、逃げるとなれば地下水路に降りひたすら隣の町に進むのが良い。

 勿論、それを逆手に出口という出口を塞がれて出られなくなった悪党も数人いたが、現在の地上状況でそんな手配をしている人間がいるともチェストには考えられなかった。

 しかし、後ろを着いてくるクルルにはその知識は無いらしい。多分、とっさの判断で逃げ延びるなら地下と脳裏に閃いたのであろう。

 チェストよりも頭の回転は早いようだった。