忍び込むことは成功しても、アリトは目的に辿り着けずに居た。

 その上、時間の経過もはっきりしない。

 部屋を照らす光は種の構成で作られた光球で、窓はなく、壁際には圧迫感のある程、本が詰まった棚がある。

 会話と言えば、先程のようなどうでもよいことばかりで、息苦しさは全開だった。

 本来、リンメイが告げるDMの報告は既に終わっており、格別此処にいる理由も無いのだが、もう少しで政府へ攻める手段が浮かぶというギバルの言葉に、足止めを食らっていた。

「長官殿っ」

 そんな、退屈なアリトは、駆け込んだ血だらけの兵士に、勝機を悟る。

「な、な、んだ、血、血いっ」

 床に落ちる大量の血液にギバルが、息を詰まらせる。それに代わりアリトが静かに聞いた。

「DMが、いきなり、暴走、博士数名と兵士がっ、次々に、殺害されてます。
 副長の、推測、では政府の回しものがなんらかの処置を施し、たと」

「外は、戦闘ですか。
 ギバル長官、如何なさいましょうか」
 アリトは兵士に問い返し、兵士が力無く頷くのを確認してギバルに視線を向けた。

「DM、だから、欠陥品を使うのは嫌だったんだ、あの野郎、最初から政府も私達もけすきだったな」