とにかくだ。

 少女が放ったそれは中級者の上レベルに匹敵する。無論、少女だけに威力は低い為大惨事には至らなかったが、それなりの玄人ならば、場は消えてなくなっていたであろう。

 因みに、鍵詞は、自分流に呪文をアレンジして成り立つ。
 ブラック・スターの基となる呪文は、もっと長い。誰かが使っていたものをインストールしたとしか思えなかった。

「リンメイ様、如何なさいますか」

「少女を町からださないように。
 私はギバル様に旨を話てきます」

 リンメイと呼ばれたシスターは、それだけ言うと廊下を歩きだした。

 セスナは、天井で小さな羽をはためかせて人間達の行動を一瞥すると、逃げる少女を追いかけて飛ぶ。

「セスナ、疲れた」

 そんなセスナに気づいて、愚痴を漏らす少女に受け止められて、セスナは小首を傾げる仕草をするだけだった。

 少女は、神官達が居る施設から出て町へと抜けた。

 行く宛もなくさまよっていると、兵士が少女を取り囲んだ。

「私、なんにもしてないよ」

 流石に少女もうんざりと答えた。

 だいたい、少女ひとりに大人数人は卑怯である。

 だが、囲んだ兵士は普通の兵士ではなかった。