「長官とは、ヴォルラスさんが闘っている方ですか」

 床に座り直したスピカが聞いた。

 アリト達が開けた穴の外からDMの気配が迫るのを気にしながら、リンメイが頷いた。

「女、治種は使えるか」

「多少なら、ただ、腕が思うように動かない」

 目線を逸らしたリンメイに頷き、彼はスピカにも聞いた。

「副は」

「分かってます、彼女を先に治してから、ですね」

 スピカがゆっくり立ち上がり、リンメイの側に近寄って屈むと、少し長めの詠唱と鍵詞を紡いで、骨折以外の怪我を消し去る。

 骨折等はやはり、それ専門の知識と技量を有する。見よう見まねの手ほどきしか受けていないスピカには、それが精一杯の治療だった。

 それとは反対に、シスターが得意とする分野であるからか、骨折しているにも関わらずスピカの怪我を素早く治してしまう。

 鮮やかな緑の光が消えた後、スピカの姿は以前と変わらないものになっていた。

「凄い。
 また、怪我をするのが嫌になりそうです」

 呟くスピカにリンメイは苦笑い立ち上がる。しかし、骨折の痛みは響くようで、その顔は複雑なものであった。

 そして、彼等はヴォルラスの元へと急いだ。