「兎に角、出る方法がないのだから、それも一理あるだろう」

 リンメイを余所に楽しげに笑うブギルの服をアリトは掴む。

「本当にないのかしら」

「無い、まったく思い付かない」

「うそつき」

 アリトは服を掴んだまま、ブギルに冷えた目線をくれていた。

「なんでそう思うんだ」

「考えてみたら貴方がそう言う態度の時は、必ず、何か策がある証拠よね。
 言いなさい、でないと胴体吹き飛ばすから」

 言葉とは裏腹に、アリトはふてくされた顔をする。

 ブギルが諦めた微笑を浮かべれば、アリトの機嫌は更に悪化した。

「私の動揺を見るのが楽しかったのよね」

 段々と張り付いた笑みに変わり、ブギルに詰め寄る。

「そう、怒らなくても良いだろう」

「もう一度聞くわ。
 逃げる手段を得た上で貴方は此処に来たのでしょう」

「ああ、そうだと良かったんだけれど」

「ただで教えないみたいな言いぐさね」

 惚けるブギルに、怒りを抑えきれずにアリトは言い放つ。

「当然だろう、今回はアリトが悪い」

 見返されてアリトは息を詰まらせた。

「そうだろ」

「悪かったわね、時間が無いわ……意地悪しないで教えなさいよ」