「まあ、良いじゃないか。
 それより、解除パスを教えてくれないか」

 答えにならない答えに、リンメイは顔を歪める。

 二人の会話から拾えることは、DMデータを長の元へ持ち去ること。

 また、クラフトと呼ばれる種師は、政府側でなんらかの行動(アクション)を起こした人物のようである。

 リンメイは、逃げられ無いことを悟りながら外で起きている事態を聞いた。

「核である人間のサンプルを、誰かが逃がしたのは間違いないわね。
 ま、此処から出られない以上、あなたも私達もそれらの餌食になることを待つしかない厄介な事態ね」

 大いに慌てるわけでもなく、アリトが言った。

「厄介といえばもうひとつ」

 それに被さるように言葉を繋いで、リンメイより離れた位置で気絶している二人を指差した。

「彼等と一緒は非常に不味い」

 リンメイも指さされた方を見ると、ブギルの言葉に眉をしかめる。

「だからといって、彼らを始末するのは更に不味い」

「どういうこと」

 咳払いひとつしたブギルは悩ましげにそれに答えた。

「芸術品は、眼鏡人間のことになると、敵も味方もなくなるんだよ」

「はあ?」