できるならば、芸術品とは関わらずに撤退したい。

 なにせ、個人の趣味だ。

 あの四人を連れてこれたという事実があれば、調査部も開発部も何もいえない筈である。後は、ラプラス団を名乗る輩が介入したことを、世間体に知られないよう上手く立ち回るだけだ。

 アリトに取って、神官領域が消えることになんの痛手も無い。ただ、首領でありすべての神官を束ねるシュイリのことを思うと、些か胸内が痛むのだが、それにも増して、DMと言う量産型兵士のデータの魅力には、どうしても勝てそうに無かった。

 勝てないからこそ、画面に向かったまま制止しているアリトが居た。

 セキュリティ解除のプログラム変更の時間と逃走時間の区分、逃走経路といらぬ介入を含む予測。

 そして。

 アリトは、そのまま凍り付く。

 項に、機械の冷たさを感じたのだ。

「面白いことをしているね。
 君がこれほど夢中になるのも珍しい」

 掛けられた無駄に余裕のある声に、うんざりと机の端を人差し指で叩く。

「何の真似かしら」

「何時も背中をとられてるからかな、たまにはやり返したくもなるわけで」