「お前さぁ………。」


イライラした気持ちを抑えていたつもりだった。


が、実莉が俺の声に体をビクつかせ、脅えたように上目づかいで俺を見る。



その顔を見て、心臓のペースメーカーが壊れたかのように一発強い拍動を打ち、血流が一気に全身に流れるのを感じた。


くそっ!


ふざけんな!


そんな顔で見るな!


俺は、自分の訳わかんねぇ気持ちに余計イライラしていた。


だから、実莉を壁に強く押し当ててしまったのは、半分八つ当たりかもしれない。


実莉を壁と自分の腕にはさみ、おかしな征服感を感じながら、キレイなその顔を見つめた。


実莉も、戸惑いつつ俺を見つめてくる。


二重の大きな瞳が、動かない。


一息吐いて、気持ちを落ち着かせる。


「お前さぁ…、
もう少し警戒感持て。

いつも、男に絡まれてんじゃねぇよ。

無自覚なんだろうけど、気をつけろよ。」



実莉は、俺が言った言葉に動かないままだったが、
その澄んだ瞳から大きな雫が流れてきた。