少し前を歩く村上君の後ろを、ゆっくり歩いた。
二人の距離は縮まらない。
隣に並びたくても、どうしても出来なかった。

教室に近付くにつれ、歩くスピードも遅くなる。


「行けるか?」

「…うん。」


大丈夫。絶対大丈夫。
自分に言い聞かせるように、心で何回も唱える。

手にはいつの間にか、汗を握っていた。


―ガラッ


クラス中の視線が集まる。
それと同時に、イジメの中心になっている野村さんが駆け寄って来た。


「村上君!どこ行ってたの?」

「ちょっとな。」

「って言うか…何で村上君が桜木なんかと一緒にいる訳?」

「それは…」

「たまたまそこで会っただけやで。」

「そうなんだ。よかった!」


え――…?
今のは何…?

やっぱり私は迷惑だったのかな。


「桜木さんには近付かない方がいいよ。」

「何で?」

「皆嫌ってるから。村上君とは似合わないと思う。」

「…ふーん。そうなんや。」


村上君の言葉で、私は酷く傷付いた。

やっぱり人間は信用出来ない。
皆最後は裏切るんだから。

辛い思いをするくらいなら、関わらない方がいい。
損する人生はもうご免だ。