「・・・分かんないの。
気がつくといつもここにいて
気がつくと

一人ぼっちだった。」

遥子はまるで独り言のように
ついさな声でつぶやくと
静かに笑った。

笑っているのに
悲しそうだった。


「ねぇ、光輔・・・。」

下を向いたままの遥子が
僕を呼んだ。

「ん?」


「もう、一人ぼっちはイヤなの。
だから、私から離れていかないで。」


「っわ!」

遥子はそういうと
僕の胸へ飛び込んできた。

遥子は意外と小さくて
だいたい僕の肩あたりに頭がきた。

その小さい体で
遥子は
僕の体をぎゅっと握った。

―――『行かないで』

まるで僕を
ほかの世界へ
行かないように・・・
と掴む1本の糸のように。

それはとても細い糸だけど
確かにそう感じたんだ。