まるで不思議の国を奔走し、引っ掻き回すアリスのようだ、と誰かが言っていた。
『スパイスが足りなかったのよ、彼は』
「スパイスって、あんたねぇ」
優しいだけじゃ物足りない。
「そこら辺に転がってるじゃない、不安要素が」
彼は人気者だし
性格も顔も良い。
女子からのアタックは途絶えることはなかった。
『そんなの、取るに足らないわ。だって彼、私に夢中だったもの』
自信ではなく事実。
彼は私が言えばなんでもした。
告白も、大事な試合も。
練習だって、
私が言えば断っていたのだ。
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