冷たい風が吹きつける中

そらはブランコをゆっくり漕ぎ

ふけっていた。




やはり家には帰りずらい。





そらの生きてきた23年で初めて、

あの常套句を叩き込んだ本人、母華子に“隠し事”をされてしまった。




そのことへの失望感が薄れることなく身体を侵食している。





今のそらにとっては、この冷たさが何よりの薬に感じた。



暗い公園にはもう子供も、ご老人も、学生もいなかった。


いるといったら、路駐しているタクシーと野良犬くらいだ。



そらの頭の中には

牧田夫人に言われたこと、そして

牧田本人の言った




『はなこ』





そればかりがぐるぐると回っていた。





確かに 




『はなこ』




そう言ったと思う。




私に瓜二つの『はなこ』はひとりしか

いないのではないだろうか・・・





そう思わないではいられなかった。

それと並行に、自分の耳を疑い始めた。