しかし、男が心配するのは人形よりもベッドの上で眠る百合亜の姿。
男は、急いで百合亜の姿を確認した。

百合亜が変わらず、そこで眠っていることに安心すると体勢をもどしながらまた、レイチェルの方へと視線を戻した。



「――もういい…それ以前にお前は何処から入ってきたんだ?此処へ来る扉はひとつしか、なかろうに」



レイチェルが不気味な笑みを浮かべながら指を指す。
その指の先にあるのは、紛れもなく窓だった。

黒いカーテンが揺れており、窓が開き風が吹きつけているのが分かる。

本当にこいつ等は、窓なんかから侵入してきたのだろうか。
あんな一瞬の間に。

影欟は、不快さを取り除くことなど出来なかった。
呆れてため息すらも出ない。



「一体、何の用なんだ。急ぎの用ではないのなら、また出直してくれ…」



疲れ果てた男は、そう告げた。



『そうはいけませんねぇ。直接、ALICE DOLLの方とは無縁なのですが、ワタクシ個人的に貴方様の娘さん、百合亜様に用事があるんですよ』



言い終わる頃には、またチェアの方に腰を掛けていた。

ティーカップの中の紅茶を全部飲み干すと、一息つき安堵のため息をつく。