この世界で二度きみを殺す

『きゃー!そーちゃんやっぱしキャップ似ー合ーうー!』



そうして僕らは服屋に来ていた。


店内にも関わらず、ちさとは声を上げてはしゃぐ。



『………外していい?』


『待って待って!
その前にこれも!』



ちさとは小走りで、ガラス製の棚に飾られたサングラスを持ってくる。


そのはしゃぎっぷりに店員さんが引いているのがわかる。


他の客にはアクティブに接してるのに、僕らとは目が合っても声を掛けて来ないからだ。


まあ、その方が楽っちゃ楽なんだけど…。



『んー…、やっぱ無いほうがいいかなー』



サングラスをかけた僕を、首を傾げて覗き込むちさと。


散々騒ぎ立てといてその一言って。



すると、ちさとはひらめいたように別の場所へと駆けていくと、

元気よくUターンし、再びこちらにやって来る。


そうして怪訝な表情を作る間もなく、黒縁の華奢めな眼鏡をかけさせられた。



『――あ!やっぱしちさとの思った通り!

そーちゃんは綺麗な顔してるから、こういう細身な感じのが引き立つと思ったの!』



蛍光灯並みに光っていた笑顔が、朝日のような、爽やかさと優しさを交えたようなものになる。


僕は『それはどうも』と軽く受け流し、帽子を深くかぶることにした。



…"綺麗"とか、恥ずかしげもなくよく言えるなと思いながら。