この世界で二度きみを殺す

ここは、県内有数だけあってとにかくデカイ。



大きく分けて四つの建物が、"森"、"山"、"海"、"空"と名づけられていて、

バス停があるのは"森"エリアだ。


大きな商店街を正面に構えているせいか、

その名の通り、森の木々のように人々が込み合っている。



バスから降りた途端、突き抜ける青空に相応しい爽やかな風と、

会話がかき消されそうなほどの騒音に包まれる。



そしてはしゃいだちさとが離れてしまう前にと外に出てくるのを見計らい、手を差し伸べる。


そこに小さな手がそっと乗せられると、僕らはゆったりと辺りを見渡した。



今日の目玉商品を饒舌に宣伝するスタッフや、

何かの新製品のキャンペーンを彩る着ぐるみたち。


また、"プランのご相談承ります"という携帯電話のイラスト付きの看板を掲げた赤色の派手なテントも見られ、

それらが遊園地を思わせる賑わいをかもし出している。



僕もちさともここへは数えるほどしか来たことがなく、

この光景に圧倒されながら、ただただ黙って正門への道を横切る。


ふと、ちさとの横顔に目をやると、好奇心による高揚感のせいか、

頬に桃色のチークが上乗せされているように見える。