僕らが向かったのは、県内有数の大規模なショッピングモール。


無料バスが家から徒歩二十分ほどの場所から出ていて、そこからさらに四十分以上バスに揺られる。



込み合うバスの中、ちさとが人混みに酔ってしまわないよう、

僕と向かい合う形で、後ろ側のドアに寄りかからせた。


ほんのちょっと頭を下げれば僕はちさとの頭に、ちさとは僕の胸に触れるくらいの至近距離。



ちさとが微笑むように軽く唇を噛み締めながら僅かに顔を俯かせ、

同時にTシャツの隙間から、細く白い肩が覗くようになる。



僕はそれに気づかないふりをし、窓の外へ目をやる。


そして、意識が人混みの中へと紛れてゆく。



そうしているうちに、気づくとバスはモール内の駐車場へと入り込んでいった。