『そーちゃん、お待たせ♪』



仕切り直すようにちさとは言った。


僕から二歩ほど離れて、全身を見せるようにして満面の笑顔を向けてくる。



その格好は髪を上にまとめているせいか、幼さと女性らしさが7:3くらいの割合で混在していて、

胸から上にかけてのパーツにほんのりと色香が漂っている。



エロいな、

とは思わなかったし、言わなかったけど。



こういう時に限って適当な言葉が出てこなかったので、

1秒ほどあれこれ思案したあと、立ち上がって軽くちさとを抱き寄せた。


するとちさとが、僕の胸に体を預けるように頬を押し付けてくる。



おそらくさきほどの夏の太陽のような笑顔は、

季節を逆戻りし、春のほのかな日差しを思わせる緩やかな微笑みになっているのだろう。



そこで、母親が勢いよく扉を開いた。



『爽、お金持った?』



そう言うと、お互い背を向け合って天井に視線をやる僕らの不自然な格好に気づき、母親は眉をひそめる。