『―――ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね…』



ちさとの震える声が、聞こえる。


まるで呪文のように、その言葉ばかりを続ける。




…そうだ。


確か最初にその光景を見たのは、

激しい春雨に見舞われた、あの日だった。




それはちさとの17回目の誕生日。




その日僕らは白で統一された小さな部屋の中。


雨音に包まれた、あの空間の中にいて。



ちさとは熱を帯びた吐息を交え、『ごめんね』ばかりを言い続けていた。



それが何だか悲しくて、僕は何度も、その唇に口付けを落とした。



言葉の出口を塞ぐように。

そして貪るように。




眩しいほど真っ白なシーツの海の上で。



それを波打たせながら、


冷えた体を温めあいながら、



僕はその言葉を聞き続けていたんだ。