『新山さんって、速水君のいとこ?』



確か、野本君と初めて会話を交わしたのが、こんな感じの一言だったと思う。



高一の時、僕とちさとは別々のクラスで、

この時はどちらかが委員会か何かで、帰りが遅かったんだっけ。



他の教室で待つちさとを迎えに行こうと、鞄を手に取り、教室を出ようとした所だった。



野本君は、他の男女何人かと黒板の辺りでだべっていて、

その声と一緒に向けられた皆の目は、決して感じのいいものではなかった。



『そうだけど…、何か』



少し眉を寄せ、非友好的な態度を取って、ささやかな反抗を見せる。


しかし野本君は、それが面白おかしいと言わんばかりに、嫌な笑みを作る。



この瞬間から、僕の中での野本君は、"クラスメイト"から"嫌な奴"に格下げになった。


まあ、僕に嫌われても何の損もないんだろうけど。



『一緒に暮らしてるんでしょ?
家も一緒、学校も一緒、行動もず~~~っと一緒って、気が滅入らない?
あいつ、犯罪者でしょ?』


『…………は?』



犯罪者?


ちさとのことをそう言ってるのか?