しんみりとした空気が流れてしまったので、

それをリセットするべく隣の肩を肘でつつく。


頭をなでられない両手の代わりに。



「あーぶーなーい~~!
そーちゃん何するのー!」


「ちさとがしっかりお皿持ってないのが悪いんだよ、あいた」



倍返しされた。



肘でちょっと小突いただけなのに、体の側面全部使って体当たりってどういうことだ。



"よしよし"の代わりに返ってきたのが"コノヤロウ"とは、全くもって割りに合わない。



けど、湿っぽい空気に少し彩が加わった気がしたので、

「本当に大丈夫」の意味を込め、ちさとに笑みを向けた。


そしたら、少しだけだけど、納得してくれたようだった。



僕に注がれていた心配そうな視線が無くなった事がわかると、手先の作業に没頭する。


そして同じ作業を繰り返すうちに、今日、学校で不意に思い出させられた"あの事"が、

頭の中を侵食するように少しずつ広がってゆく。