「進藤、おまえそれサボりってゆーんだよ」



進藤さんの前の席、つまり僕の斜め前の席の男子が振り返った。



「にゃにお~~うっ!
これでも委員会は皆勤なんだぞぅ!?」


「皆勤"だった"だろ」


「うわああん、そーちん、野本がいじめるよぅ」



今度は両手を広げて抱きとめて~ジェスチャーをした。



というか、このタイミングで僕に話を振られても気まずい。


僕がというか、主に野本君が。


あからさまに嫌そうな顔をこちらに向けている。



その顔を進藤さんに向ける瞬間に笑顔に変え、

「悪かったよ」と言いながら進藤さんの頭を軽く叩いた。



そして野本君は再びこちらを睨みつけ、顎を突き出す。



「てめー、進藤に手ー出すなよー!」



この場合の"手を出すな"というのは、男女関係的な話ではなく、暴力的な意味合いだ。


授業中、僕がいきなり進藤さんに殴りかかる事を予想しての物言い。



「野本!!」



進藤さんが、「謝りなさい!」と声を向けるが、野本君は背を向けたまま無視している。



何度言ってもその声が届かないことがわかると、

進藤さんはこちらに向かって本当に申し訳なさそうに、両手を合わせた。



『あ、いやいや』



僕は、口の動きでそれを伝えた。


ついでに手を顔の前で、軽く横に振って。