「そぉちゃん?」



頬ずりをやめ、僕をまたいだまま小首を傾げる。



僕は上半身を起こし、返事の代わりにその背中に腕を回し、抱き寄せる。



――ちさとは、僕のこういう行動に弱い。


きっと頬を赤くし、瞳と口元を緩めていると思う。



その隙に、ワイシャツの上から、背中をさするようにまさぐった。




――刺し傷がない。




心臓付近に4箇所、背中の真ん中辺りに2箇所。


全部で6箇所、刺し傷があるはずだ。




「そーちゃん、だぁいすき…」



愛情表現と思ったのか、そう言って僕の肩に乗せていた顔を、今度は胸に埋めてくる。


僕は、仕草に違和感を気取られないように、背中をぽんぽんと叩いて締めくくる。



そして、ちさとの細い肩をそっと押して、お互いの顔が見えるようにする。



「朝ごはん、食べようか」


「うん!」



ちさとは僕の上から飛び降りると、下で待ってるねと言って、

階段を転びそうな勢いで駆け下りていった。