けど、ふりむいたら、リビングにいたはずのちさとが目の前にいた。


鼻と鼻がぶつかって、ぼくはしりもちをついてしまった。



リビングからの出口は、ろうかへのドアと、庭に出る窓だけだ。


けど、ちさとが一人で外に出ることはほとんどない。


だから、ワープでもしないかぎり、ちさとはここへはこれないはず。



ちさとはびっくりするぼくを見下ろして、

"ちさとはそーちゃんのためなら何でもするんだよ?"って言って、笑ってみせた。


すごくこわい。


笑ってるのに、笑ってない。


今まで内しょででかけていたのが、バレてしまった。


お母さんに言われたら、ぼくはまた叩かれる。



ちさとは、手をつないだら許してあげると言って、

ぼくに手をさし出してきた。



何を考えてるのかわからないけど、今はちさとが、お母さんが、こわい。


ぼくはしかたなく手をにぎった。