この世界で二度きみを殺す

頭の中がはっきりしない。


何と、言えばいいのだろうか。



炎天下にいる時の思考回路と似ているというか、まどろみに似ているというか、

意識はあるのにどこか遠くて、人の声に否定する気力がない。



「はぁい、流しますよぉ~~」



ちさとの子供をあやすような声に、僕は頷きついでに頭を下げる。


なされるがままに深く俯いたり、右に傾いたりする。



そのまま僕の思考回路は覚醒されることはなく、

頭にバスタオルが当てられて、ようやく現実に意識が引き戻された。


そして、ここで初めて、ちさとの手つきが思いのほか慣れたものだと思い知る。



乱暴に掻き回されると思っていたから、愛しむようなそれに、

恥じらいと、ほんのちょっとの居心地の良さを覚える。



バスタオルを通し、水が入り込んでしまった耳にも気を遣いながら、ほどよい指圧で髪の水分を吸い取っていく。



意外に溜まっている凝りが解されるのが気持ち良くて、

迂闊にも、バスタオルが頭から剥がされるのを、惜しいように感じてしまった。



そんな事、口にすればちさとが調子に乗るだけなので、死んでも言わないけど。