ちさとはその様子をしばらく見つめ、


「ぜったいだよ?」


と呟いてから、小さな即席露店風呂に浸かった。



極限まで注がれたお湯が、惜し気もなく外に押し出され、そのまま地面に吸収される。




「ふわぁー…」



ちさとは感嘆の声を上げて、空を見上げる。



太陽は今まさに沈んで行くところで、

塀に囲まれたこのスペースから見えるのは、済んだオレンジとブルーが混在した空。



さきほどまで太陽光のおこぼれによって輝いていた水面は、

縁側の内側にある、リビングから漏れる人工光を反射するようになる。



そして、ちさとが一番星を探しはじめたのを見計らい、

シャワー用に付け替えたホースの先を、小さな頭に向けた。


目にお湯がかからないようにしながら、指の腹を使って、髪の隅々まで丁寧に濡らしていく。



「そぉちゃん、くすぐったい」



そう言いながら、ちさとはとろけそうな顔つきになる。



何だか見てるこっちがむず痒くて、

髪をゆすぎながら、頭をわしづかんでやる。



しかし、ちさとは嬉しそうにするだけで、効果がないとわかったので、またゆすぎ作業に戻る。


効果って何の効果かと問われたら、それはちょっとわかんないけど。