「――――っ!?」



部屋を出ようと扉側を見た瞬間、僕は後ろに飛び跳ねた。



ちさとが開きっぱなしにして行ったドアから、誰かの顔が、上半分、

こちらを覗いていたからだ。



よくよく見ると、背後でポニーテールが揺れており、

それが進藤さんだとわかった。



「びっくりしたー…。
仕事終わったの?」


「うん、今ねー。
で、図書室から出てきたらそーちんの声がしたから、一緒に教室戻ろーって思ってたんだけど。

どったの?だいじょぶ??」


……。


「そーちん??」



「あ、うん。大丈夫だよ。
ちさとと話してたら僕がうっかり棚倒しちゃったんだ」



進藤さんは、「ふーん?」と言いながら、

不思議だと言いたげに、棚にめり込むバットを見る。



ですよね。


事故にしては異様ですよね。



しかし、次の瞬間には興味が失せたようで、視線を戻していた。



そうして、進藤さんの目が伏せがちになる。



「新山さん……」



そう呟くと、背中の辺りで手を組んで、何やらそわそわし始めた。


何だろうか、この間は。



「…仲いいよね、そーちんと」



切なげに囁かれた。


さっきまでの明るさが見えない。



僕がしばらく何も言わないでいると、


「なんちって!
ちょっと焼きもちやいてみたー!にゃははっ」


と、底抜けに明るいいつもの進藤さんに戻ると、ぴょこんと廊下に飛び出した。



「変なこと言ってごめんちょ!
じゃ、あたし教室先行くからね!」



進藤さんが、廊下の向こうに駆け出していく。