この世界で二度きみを殺す

「やだッ!さわんないで!!!」



手の甲を、鋭い爪で思い切り引っ掻かれる。


みみず腫れができ、そこから血が滲む。



「穢された、穢された!ちさとのそーちゃんが、穢された!!
ちさとはそーちゃんだけ、そーちゃんもちさとだけになればいい!!
汚いのはそーちゃんじゃないッ!!!」



廊下中に奇声が響き渡り、注目の的となってしまったので、

隣の準備室のような小さな部屋に、ちさとを誘導する。


しかしそれも拒絶され、その狭い部屋の中で突き飛ばされる。


そして後ろの棚に頭をぶつけ、

上に置いてあった野球ボールやバットが落ちてきて、カウンター攻撃を食らった。



痛覚と聴覚をもって、これ以上何も落ちてこないことを理解すると、

きつく閉ざしていた目をゆっくりと開ける。



そこには、座り込む僕をまたぐ、ちさとの脚。


血のない表情で僕を見下ろし、手には先ほど落ちてきたバットを握っている。