体中が憤怒の感情に支配されているだろうその姿に、目が釘付けだったのだ。


ちさとの肩は小刻みに震えていて、下を向いた顔は前髪で覆い隠されている。



そして胸に抱えられているのは、水色のギンガムチェックの弁当袋。



「…あ…。ち、ちさと…?
え…っと、ひょっとして、お弁当待っててくれた…?」



ちさとは縦に深く頷く。



「ごめんね…。ちょっと調べ物があってさ…。
お弁当、どこで食べる?」


「…調べ、物…?」



僕の問いかけを無視して、別の言葉を引用して聞いてくる。



「そう、調べ物…。
政経の試験が赤点だったから、」



そこで言葉が詰まる。



下を向いていたせいで伺えなかったちさとの顔が、いつの間にか露になっていた。


一見色が無いように見えるその瞳の奥には、青い炎が高く燃え上がっている。



そしてちさとは、顔をやや上に向け、僕を見下ろすような視線を向けた。



「調べ物?他の女と、調べ物?
ちさとを置いてけぼりにして、他の女に頭なでなでされて、どんな調べ物してたの?ねえ??」



見られてしまっていたらしい。



けれど、進藤さんはちさとのクラスメイトでもあるのだから、

いくら何でも"他の女"呼ばわりはないだろうに。


そう思った。