この世界で二度きみを殺す

僕は、次の言葉に繋げる前に深呼吸して一拍置いた。










「この女性が身内…っていうか、"お母さん"だよね?










―――進藤さん」




僕の下敷きになる進藤さんを見下ろす。


両腕をがっちり抑え、組み伏せた体勢。


セクハラではなく、正当防衛の行く末である。



進藤さんは眉間に皺を寄せる。


明確な肯定の反応は見せないが、否定もしていない。つまりイエスか。



「それ、で、―――っ」



ああ、ナイフがかすった左のわき腹が痛い。


酸欠と出血で目がチカチカしてきた。


踏まれた足も痛むが、それよりも上半身の心配をしておくべきだった。


この体勢は良くないな。


傷自体は大した事ないのに、出血を絶好調に促進している。



そう思い、ナイフを森の奥へ放り投げてから進藤さんを解放した。


そうして少なくなった貴重なヘモグロビンが、少しでも多く酸素と結合出来るようにする。


つまる所、深呼吸だ。