この世界で二度きみを殺す

一抹の不安が過ぎる。


杞憂であるに越した事はないが、そうでないとしても、事を遂行し切ってしまえばいいわけだ。



足音を殺して公園へと近づく。


草を踏まねばならない場所は、風に紛れて少しずつ。


数秒の距離を既に200秒は要している。


先回りしとくべきだった。凶器を探すのに手間取りすぎた。

ああ、いた、いた。

草の隙間のフェンスから、確かに人影が見える。

蛍光灯に照らされてる。こちらに背を向けてブランコに座っている。

遅いなあそーちゃんまだかなあなんてこちらに振り向いたりしないだろうか。

きっと物音に対するアンテナがバリバリに立ってる事だろう。うわ小石踏んだ。反転した。

パチンと音が鳴る。思わず身が固まる。

――落ち着け。


ちさとは相変わらず空を見上げてる。ああもう聴覚が狂っている。耳鳴りがする。

入り口(多分)が歩みを進められる限界値。

この先は隠れる場所が一切無い。

振り向かれるが先か、押し倒すが先か。

凶器はバッグ。

…と見せかけ、その中に身軽なナイフ。諸刃の剣とわかりつつ。

あ、なんか箱みたいの蹴っ飛ばした、ああ、ああもう。

――落ち着け。