この世界で二度きみを殺す

―――良かったじゃないか。


これで、晴れて自由の身になるのだから。


同情と恐怖に縛られ、生きていく必要は、もうないのだから。



大きく息を吸い込み、ちさとと出会い、今に至るまでの事を思い返そうとする。



どのようにちさとが僕を縛ってきたか。


どうしてこんなおかしな関係を築く羽目になったのか。


嫌な事、全部。



けれど、瞼に、瞳に、焼き付いたように、

目をつむっても開いても、そこに見えるのは、ちさとの笑顔。



子供のように喜ぶ姿や、時折見せる、全てを包み込んでくれそうな、柔らかい瞳、

他にも色んな、色んな、姿が、

まるで淡い色の色鉛筆で描かれたような絵になり、

それが一枚一枚、僕の中でゆったりとめくられてゆく。



そしてその速さは次第に増し、それでも尽きることのないページの中に、

ある一枚の絵を見つけ、めくるのを止めた。


すると静止画だった絵に命が吹き込まれ、

そこに描かれているちさとの肩が、小さく縦に動き始める。



―――ちさとと出会って、何年か経った日の映像だった。