この世界で二度きみを殺す

一体、何が起きたというのか。



電車が通り過ぎ、踏み切りが上がった後も、僕はその場に立ち尽くすしか出来ない。


見えるのは、ずっと向こうまで真っ直ぐに続く広い道路のみ。


そこにちさとの姿はない。



けれど、

唇の柔らかな感触や、残された柑橘系の香りに、

ちさとは今の今まで、確かにここにいたのだと思い知らされる。


ちさとは確かに、僕に別れを告げたのだと。



突然のキスと、思いもよらぬ言葉によって停止させられていた思考回路が、

ゆったりと、じんわりと、動き始める。