この世界で二度きみを殺す

ちさとの唇が軽く僕のに当てられた。



目をつむる間もなく、向こうの踏み切りのランプに明りが灯るのが見える。



それが機械的な音を立て始めると、ちさとはそっと顔を離した。




『…今日、そーちゃんが大人になったらどうなるんだろうなーって色んな想像できて、凄く楽しかったよ』



"それを自分の目で見るのは、きっと叶わない事だろうけど"


一瞬俯き、曇った表情が、そう加える。


けれど再び顔を上げる時には、その寂しさは全て消え去っていた。



『ちさとは"そーちゃんが大好き"って気持ちをたくさんもらったから、もう大丈夫。
今までずっと縛り付けててごめんね。ちさとはそーちゃんの事をいつまでも、』




――大好きです




そう僕の耳元で囁いて踏み切りの向こうへ駆けた瞬間、

その姿は轟音を立てる列車によって遮られた。