この世界で二度きみを殺す

歯車はいつから軋み、狂っていたのだろうか。



壊れ始めの小さな音を耳にしてようやく、

笑顔の下から寂しさや虚しさが、どうしようもなくあふれ出していた事に気づく。



――レストランで見た笑顔。



今朝の、母親との底抜けに明るいやり取り。



その節々に、実は悲しみが滲んでいたのだと、今更になって知る。



それをどのような言葉に形容すればいいのかわからなくて、

目を丸くするちさとと、ただ見つめあうしか出来ない。



喉の奥に突っかかりを感じていると、

ちさとの目元は緩み、肩を掴む僕の手を優しく払った。



『…高校卒業したら、家出て働こうと思ってるの。
ママにもそーちゃんにも甘えたままじゃ、きっとこの先色んなものがダメになってっちゃうから』



そう言った、次の瞬間。