この世界で二度きみを殺す

『あの青くて一番大きいのはそーちゃんので、中くらいでピンクいのはちさとのエプロン。
で、一番小さい黄色いのは、子供ができたら着せるの！』



隣に顔を向けるのに、首が三回ぐらい軋むような音を立てた。


しかしちさとはそんなの気にせず、話を続ける。



『黄色だから、男の子でも女の子でも似合うね♪
それで、週末には家族みんなでお菓子作ったりするの』


『…そ、そうだね』


『その頃そーちゃんはどんなお仕事してるんだろ～。
スーツとか着ててほしいなぁ。
毎朝眠そうなそーちゃんの代わりに、ちさとがネクタイ結んであげたい。
あ、そしたらネクタイの柄も選ばなきゃね！』



遠くを語る口調に、どことなく違和感を感じてくる。


滑らかな歯車が引っかかり、少しずつカタカタと狂い始める。



『やっぱ青系は外せないけど、たまには他のもつけて欲しいな♪
グリーンとかワインレッドとか』


『ちさと、』


『柄はストライプをベースに揃えていって、あとは水玉とか一つくらいキャラ物があっても可愛いと思うし、ちさと的には、』


『―――ちさと！』



思わずその細すぎる二の腕を握り締め、こちらを振り向かせる。


そうしてようやく、絶え間なく出てくる言葉が停止する。