そうして家を出ると、
アパートと塀、時々コンビニという、田舎でもなければ都会でもない、

人気と密度がほどよい住宅街をのんびりと歩く。



比較的新しい建物が多いおかげで、洒落てはいないが見栄えが悪いわけでもない。


ここが、いつもの通学路だ。




さっきのキスに浮かれてか、ちさとはずっとスキップをしている。


前から自転車が来ているというのに、お構いなしだ。



僕は、肩を抱き寄せるようにして、ちさとが自転車の通行の邪魔にならないようにする。



こんな行為はしょっちゅうなのに、ちさとは飽きることなく、何度でも笑顔を見せてくる。



「そぉちゃん、今日、いつもより優しくない?ない??」



そう言って、一方的に腕を組んでくる。


今更、ときめきも恥ずかしさもないので、特にそれに反応はしない。



けれどさすがに、朝っぱらからのキスはやり過ぎたか。



「うーん。
ちさとの制服姿が可愛いから、かな」



……適当にはぐらかそうと思ったら、さらにやり過ぎた。



けど、ちさとは能天気な笑いでそれを流した。



単純に飛び跳ねて喜ぶと思っていたから、

"うそでしょ"と言いたげな笑いが、ちょっと意外だ。




そしてちさとは、梅雨時期の真っ最中とは思えない爽やかな風が吹き抜けると、

それを見計らったようにして、口を開いた。